飛車落ち定跡 第2章 3三桂留型の駒組

前回右四間飛車定跡のいろいろな駒組について書きましたので、今回は3三桂留型の駒組を調べて、戦型を分類していきます。 なお、検討には将棋ソフト水匠4改を使用しています。PCスペックはAMD Ryzen 7 3700X、RTX2060 です。

初手からの指し手 △3四歩、▲7六歩、△4四歩、▲4六歩、△3二金、▲4八銀、△4二銀、▲4七銀、△4三銀、▲5六銀、△5四歩、▲4八飛、△3三桂、▲3六歩(第1図)

△3三桂が3三桂留と呼ばれる指し方で、飛車落ち定跡で最も難解といわれる定跡です。下手▲3六歩としないと3五歩と突かれて定跡型からはずれます。

3三桂留型
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飛車落ち定跡 第1章 飛車落ち定跡について 駒落ちの手合い割とレーティング差等

これから飛車落ち右四間飛車定跡を将棋ソフトを使用して検討していきますが、初回は将棋の駒落ち戦全般や、飛車落ち定跡ついて、思うところを書いてみたいと思います。

1.公式戦の駒落ち戦

現在、将棋連盟の公式戦では3段リーグで左香落ちが行われているのみです。戦前昭和の時代にはプロ同士の駒落ち戦が行われており、大山、升田の棋譜にも角落ち、香落ちのものが残っています。

2.駒落ちの手合割とレーティング差

江戸時代の家元制から現在までの手合い割がWikiの「将棋の手合割」に掲載されています。これによると角落ち、飛車落ちの手合割は、

   角落ち  家元制 四段級差   家元改良 三段級差  現在の将棋連盟推奨 三段級差

   飛車落ち 家元制 六段級差   家元改良 四段級差  現在の将棋連盟推奨 四段級差 となっています。

ネット将棋の将棋倶楽部24の手合割目安は、角落ちがレーティング差250、飛車落ちが レーティング差350 で、 将棋倶楽部24 の段級のレーティングの幅は、段が200、級が100です。したがって、段では角落ちが一段~二段差、飛車落ちが二段から三段差ということで将棋連盟よりは差が少ないです。

実際に 将棋倶楽部24 の駒落ち戦の勝敗を調べた「あじブログ」というサイトがあり(ご苦労様です参考になります)、角落ちと飛車落ちにほとんど差がないこと、レート差300以下でも飛車落ち下手が6割勝てていないことがわかります。

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飛車落ち定跡 第1章 下手の有力な指し方

飛車落ち定跡には、右四間飛車定跡のほかにも有力な戦法がいくつかありますので、私の知っている限りで概観してみます。

➀居飛車引き角戦法

角交換後片矢倉に組むのが普通。上手の変化としては、2二角と角交換を拒否する指し方や、4五歩と早めに突く指し方がある。

古くから指されている戦型で、平手の感覚で指せるので実力のある下手は力を発揮しやすいかもしれません。半面定跡が整備されておらず、上手にもいろいろな指し方があるので力が必要だと思います。第1図から矢倉囲いを目指すのがふつうです。上手の変化としては、△2二角として角交換を避ける指し方などがあります。

第2図のように飛車のこびんを狙ってくる指し方があり、上手の勝ちパターンとしては右側を開拓して入玉などが考えられます。

一見下手困っているようだが、
評価値は1030と先手優勢。この後は
▲2六飛、△3四銀、▲8六銀が一例
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康光流ダイレクト向かい飛車 B級2組順位戦 丸山九段vs杉本八段戦

12月8日の順位戦で杉本八段が康光流のダイレクト向かい飛車を採用してくれましたので、内容を学んでいきます。

最近は、一手損角換わりが減少したことに伴ってダイレクト向かい飛車も採用される機会が減ったようです。

△7四角、▲4三角成 に△5二金右
とし、その後△4二飛車と転換する
形が多く指されている。
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3三角戦法の序盤➀2五桂ポン

3三角戦法は、居飛車穴熊対策としての角交換振り飛車のひとつとして、ゴキゲン中飛車などとともにプロ間で指され始めたものと思われます。3三角戦法は角交換向かい飛車を主軸としますが、立石流四間飛車、中飛車などの含みがあるほか、先手の対応によっては居飛車にすることもある変幻自在の戦法です。居飛車、振り飛車両方指す方には後手番の戦法として有力な選択肢になると考えています。

また、先手番で3手目に▲7七角とする7七角戦法は、佐藤康光九段などが採用していた優秀な戦法で、相振り飛車に対応しやすいのが強みです。3三角戦法をマスターすることで7七角戦法にも応用可能と思います。

初手からの指し手  ▲7六歩、△3四歩、▲2六歩、△3三角(第1図)

後手が4手目に△3三角とするのが3三角戦法です。これに対して先手の候補手は、➀3三同角成、➁2五歩、➂6八玉、➃4八銀です。順次調べていきたいと思います。

➀▲同角成は3三桂の形にして指す手。➁▲2五歩は以前の記事の鬼殺し向かい飛車と同し局面になります。➂▲6八玉、➃▲4八銀は穏やかですが、▲4八銀は後手△2二飛とする余地があります。いずれも後手居飛車の可能性を考慮して駒組する必要があります。

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鬼殺し向かい飛車の序盤➃ 新ソフトでの再検討

初手からの指し手 ▲2六歩、△3四歩、▲2五歩、△3三角、▲7六歩、△2二飛(第1図)

現在ではやや無理と見られている形。先手番の7七角なら同様に進んだ際、飛車先の歩が2六歩になっているのでより条件が良い。

4年くらい前に、将棋ソフトを使って第1図を調べたのですが、最近新しい将棋ソフト「水匠4改」を使って、改めて調べたところ前回と違う手が出てきていましたので、もう一度検討してみたいと思います。 なお、検討には将棋ソフト水匠4改を使用し、PCスペックはAMD Ryzen 7 3700X、RTX20です。

第1図からの指し手  ▲3三角成、△同桂、▲6五角(第2図)

第2図は、現在では先手が十分というのが定説になったようです。ただ、最近でもプロの実戦で第1図から▲9六歩、△4二銀、▲9五歩と進んだケースもあり、先手が乱戦を避ける場合もあるようです。

角成が受からないが、後手も△4五桂と反撃し以前は後手良しと言われていた。
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