飛車落ち定跡 第1章 飛車落ち定跡について 駒落ちの手合い割とレーティング差等

これから飛車落ち右四間飛車定跡を将棋ソフトを使用して検討していきますが、初回は将棋の駒落ち戦全般や、飛車落ち定跡ついて、思うところを書いてみたいと思います。

1.公式戦の駒落ち戦

現在、将棋連盟の公式戦では3段リーグで左香落ちが行われているのみです。戦前昭和の時代にはプロ同士の駒落ち戦が行われており、大山、升田の棋譜にも角落ち、香落ちのものが残っています。

2.駒落ちの手合割とレーティング差

江戸時代の家元制から現在までの手合い割がWikiの「将棋の手合割」に掲載されています。これによると角落ち、飛車落ちの手合割は、

   角落ち  家元制 四段級差   家元改良 三段級差  現在の将棋連盟推奨 三段級差

   飛車落ち 家元制 六段級差   家元改良 四段級差  現在の将棋連盟推奨 四段級差 となっています。

ネット将棋の将棋倶楽部24の手合割目安は、角落ちがレーティング差250、飛車落ちが レーティング差350 で、 将棋倶楽部24 の段級のレーティングの幅は、段が200、級が100です。したがって、段では角落ちが一段~二段差、飛車落ちが二段から三段差ということで将棋連盟よりは差が少ないです。

実際に 将棋倶楽部24 の駒落ち戦の勝敗を調べた「あじブログ」というサイトがあり(ご苦労様です参考になります)、角落ちと飛車落ちにほとんど差がないこと、レート差300以下でも飛車落ち下手が6割勝てていないことがわかります。

また、5ちゃんねるの「駒落ちがどのくらいのはハンデなのか最新ソフトで調べた」のページでは、角落ちが評価値754差、レーティング換算で218差、飛車落ちが 評価値826差、レーティング換算で239差 となっています。これはについては、2019年2月時点のものであること、初期局面のみの評価であることから、このまま受け取ることはできませんが、おおまかな目安にはなると思います。以外と差が小さいことが驚きです。

ちなみに現在の管理人の使用している水匠4改では、角落ちの初期局面の評価値が678、飛車落ちの初期局面の評価値が755となっています。駒落ちのハンデは、従来考えられていたよりも小さいのかもしれません。

3.駒落ち特化将棋ソフト「水匠U」について

 「水匠U」 は、たたやんさんの将棋ソフト水匠を駒落ち用にアレンジしたもので、以前将棋倶楽部24 で駒落ちで対局していました。こちらのツウィッターで概要がわかります。たたやんさんによると、「四枚落ち:稀にR2000超相手に勝つ実力、二枚落ち:前回R2525、飛車香落ち、飛車落ち:勝った方を話題にさせてください、角落ち:人類が勝てるのか試してください。」とのことで、将棋ソフトの恐るべき強さに驚くしかありません。ここでも、駒落ちのハンデは意外と小さいのではないかと思われます。

3.飛車落ち定跡について

 山田道美九段が昭和45年(1970年)に書かれた「プロの目とアマの考え(飛車落編)」(山田道美将棋著作集第五巻に収録)での飛車落ち定跡に関する部分が、現在でもあまり変わらない状況だと思いますので引用します。なお、この著作で山田九段は、この当時の高段者の目で定跡を洗いなおす作業を行っており、今回の飛車落ち定跡の検討でもこの著作に負う部分が多くなります。

「五年前までは、月に二、三度、ある銀行のコーチに行っていたが、そのころ飛車落ちでは下手に引角戦法ばかり教えていた。なぜ、 引角戦法 ばかり教えていたかといえば、従来の右四間飛車の指し方は、変化が広く、下手が全部の変化を覚えるのに大変だと思ったからだ。一時は右四間飛車の定跡があまりに広く、複雑なので、この指し方は昔の専門家が営業用に作った定跡手順ではないかと思ったほどである。

しかし、ごく最近になってそれは下司のかんぐりであり、右四間飛車定跡は先人の叡智と汗の結晶であることを知った。飛車落ち右四間飛車定跡は、『大橋家家元将棋秘伝記』、 『 将棋精選 』 、 『 将棋歩式 』 、 『 将棋絹篩 』 などの古典定跡書に載っている。それらを調べているうちに、飛車落定跡をもう一度再検討してみようという意欲がわいてきた。

飛車落ちは、下手に三つの指し方がある。一つはこれから研究する右四間飛車である。もう一つは、引角戦法でこれも古くから指されており 『 将棋独稽古 』 などにも載っている。いまひとつは右四間飛車6筋位取り作戦で戦後に考えだされた、もっとも現代的な手法である。それをあえて、本稿で右四間飛車をとりあげたのは、古典定跡の再認識ということもさることながら、この定跡はもっとも飛車落らしい風格をもっていると思うからだ。

 安全という点では他の指し方の方が優れているかもしれないが、飛車落という将棋そのものを理解し、把握するという点では、右四間飛車の方が数等まさると思う。たしかに、右四間飛車は広い変化や、一手違いの危険も覚悟しなければならないだろう。しかし、そうしたきびしい勝ち方を学ぶことは、平手将棋の上達にも大きなプラスになると、私は信ずるのだ。」(一部省略あり)

4.今後の検討について

 飛車落右四間飛車定跡を順次検討していきますが、将棋ソフトの助けを借りてできるだけ形勢判断に誤りがないように進めていきたいと思っています。まずは、3三桂留の6四銀型からとりかかりますが相当の分量になるので挫折しないように頑張りたいと思います。

  

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