先手が最初に飛車先の歩を突いてくる指し方に対する、島朗九段命名の「鬼殺し向かい飛車」を将棋ソフトを使用して検討してみます。
なお、検討に使用した将棋ソフトは「技巧２」、「elmo silent majority」です。ただ、私のPCは最近のものと比較すると性能が落ちますので、形勢判断が変わる可能性はあります。その点はご容赦ください。
初手からの指し手 ▲２六歩、△３四歩、▲２五歩、△３三角、▲７六歩、△２二飛で第１図
先手の ▲２六歩、▲２五歩は、横歩取りやゴキゲン中飛車などの角交換振り飛車を避けるのに有効な指し方で、最近は採用する人が増えているようです。一方で▲２五歩と形を決めるのは、矢倉や角換わりでの作戦選択が狭くなり、後手がノーマル振り飛車の場合に向かい飛車の選択を与えるのが弱点です。
私は一時、角交換振り飛車を指していましたので、先手の ▲２六歩、▲２五歩にどう指すか悩んでいました。「長岡研究ノート 相居飛車編」（長岡裕也著）では「第１図（△２二飛）ではいろいろな指し方がある。直接とがめにいくなら△２二飛だが、これは▲３三角成、△同桂、▲９六歩、△６二玉、▲９五歩、で先手が十分という見解が多い。最も実戦例が多いのは△２二銀。△２二銀には▲６六歩と突いて矢倉を目指すことになる。」となっており、以下で△４二銀が最有力との研究を披露しています。△２二銀、△４二銀は後手居飛車の指し方ですので、後手振り飛車にしたい場合は、△４四歩としてのノーマル振り飛車か、△２二飛となると思います。また、△３二金という手も有力でこれは後日検討したいと思います。
さて、第１図△２二飛には▲３三角成、▲６八玉、▲９六歩が考えられます。今回は▲３三角成、△同桂に▲６五角と打つ手を検討してみます。
第１図から▲３三角成、△同桂に▲６五角で第２図
この▲６五角で後手不利なら△２二飛は成立しないことになります。
第２図から△４五桂に対しては、第３図▲４八銀、▲６八玉、▲７八金が有力です。他に▲４三角成は△５七桂不成とされて金桂交換が約束され先手無理でしょう。
▲４八銀には、△５五角で香取りが受かりません。簡単に後手良しのようですが、▲９八香とする手があります。
第３図から▲９八香、△９九角成、▲７八銀で第４図
ここで△４二飛として第５図
「島ノート」では、「△４二飛と４三の地点をまもるのが大事なところ、ここ△９八馬と香取りを急ぐのは、▲４三角成とされた後▲４六歩の桂取りが残り、意外に難しい形勢となる。」となっています。以下、▲８三角成、△９八馬、▲５六馬、△８四香、▲４五馬、△８七香成と進み第６図
ここで「島ノート」では▲６六歩、△８二飛で後手優勢となっていますが、将棋ソフトは▲８七同銀、△同馬、▲８四歩を示しています。以下一例として、△８八歩、▲８三歩成、△８九歩成、▲３九銀で第７図
形勢はほぼ互角か先手やや有利です。以下△８二銀、▲７五桂、△５四銀か、△８八と、▲５八金左が候補手です。
また、△８八歩に▲７五桂、△８九歩成、▲６三桂不成もあります。
第４図から将棋ソフトは△９八馬を示していますので、検討してみます。
第４図から△９八馬、▲４三角成、△８八馬で第８図
ここで、先手は▲３四馬と▲７七桂があります。第８図から▲３四馬、△５五馬、▲３五馬、△４二飛、▲４六歩、△６二玉で第９図
形勢は互角です。
第８図から▲７七桂は△９七馬、▲３四馬、△４二飛が一例でこちらも形勢互角です。どちらも乱戦ですので先手も力に自信がないと大変だと思います。
▲６五角と打ったプロの実戦例は一局だけ見つけました。2016-10-19 中村 太地六段 vs. 窪田 義行七段 順位戦Ｂ級２組
後手の窪田七段は▲９八香に△３五歩、▲２六飛を交換してから△４二飛と指してします。この交換が後手得かどうかは不明です。
長くなりましたので△４五桂に▲７八金は次回検討したいと思います。