前回右四間飛車定跡のいろいろな駒組について書きましたので、今回は3三桂留型の駒組を調べて、戦型を分類していきます。 なお、検討には将棋ソフト水匠4改を使用しています。PCスペックはAMD Ryzen 7 3700X、RTX2060 です。
初手からの指し手 △3四歩、▲7六歩、△4四歩、▲4六歩、△3二金、▲4八銀、△4二銀、▲4七銀、△4三銀、▲5六銀、△5四歩、▲4八飛、△3三桂、▲3六歩(第1図)
△3三桂が3三桂留と呼ばれる指し方で、飛車落ち定跡で最も難解といわれる定跡です。下手▲3六歩としないと3五歩と突かれて定跡型からはずれます。
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第1図からの指し手 △6二玉、▲3七桂、△7二玉、▲6八玉、△6二銀、▲5八金右、△9四歩、▲9六歩、△1四歩、▲1六歩(第2図)
第1図から互いに玉を囲いますが、下手は早めに▲3七桂として攻撃態勢を整えた方が良いと思います。上手の9四歩はこのあたりが時期です。大山名人の「大山の将棋読本5.駒落の勝ち方」に「賢明なハシ歩突き」と題して「ぜひ必要な手、玉は弱い囲いにあるのだから、逃げ道はとくに広くしておかなければならない。ハシ歩はお互い突き合うのが賢明な指し方だ。」 とされており、大山名人の駒落ちのノウハウが感じられます。
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第1図からの△6二玉で、早くも△3一角とする手があります(春図)。下手はこれに対しては▲6六歩から▲6五歩とする6筋位取り戦法がおすすめです。推測ですが、 6筋位取り戦法 はこの局面から発想されたのではないかと思われます。山田九段もそのように書いています。
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大山名人の「大山の将棋読本5.駒落の勝ち方」では「△3一角に対し従来の定跡では、▲6五銀と△6四角を押さえる指し方が、下手にとってよいとされている。(夏図)。
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しかし、銀が4筋攻撃からそれるので、ゆるみが感じられ感心できない。▲6五銀では▲6六歩と突き、△6四角なら▲6五歩と(秋図)角を追い立てる方針に指す方法をすすめたい。」と書かれています。大山名人の優れた序盤感覚が示されていると思います。
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△3一角に▲6五銀とする手(夏図)は江戸時代の「将棋早指南」に載っている手順で、山田九段の著作で「柳雪秘伝の手」と紹介されています。また、木村名人の「将棋大観」でも採用されています。▲6五銀の変化は「第5章 3一角引き角」に後ほど書きたいと思います。
第2図からの指し手 △5二金、▲7八玉、△5三銀、▲6八金直(第3図)
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6四歩(第5章)に分かれる
第2図の△5二金で△3一角と引く手もあり(冬図)やはり6五銀とする手があります。こちらも「第5章 3一角引き角」で取り上げます。
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第3図の1手前△5三銀の局面で▲4五歩と仕掛ける手があります。上手としては9筋の突き合いを行ってから△5三銀とするのが無難です。面白い仕掛けなので、9筋の突き合いのない(変化1図)を調べてみます。
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4五歩早仕掛けの変化
山田九段の著作によれば、この仕掛けは古典定跡の「大橋家家元将棋秘伝記」に飛車落早崩しとして載っており、「将棋独稽古」十七番にも載っているとのことです。ひと目無理と思われる仕掛けですが、上手が知らないと受けきるのは難しい変化です。
変化1図からの指し手 ▲4五歩、△同歩、▲同桂、△同桂、▲2二角成、△同金、▲4五銀、△4四歩、▲6五桂(変化2図)
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変化2図からの指し手 △4五歩、▲5三桂成、△同金、▲3一角、△4四角、▲4五飛 (変化3図)
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変化3図からの指し手 △3二金、▲5三角成、△同角、▲4三飛成、△同金、▲5二銀 (変化4図)
ほぼ一本道の手順が続き変化4図になります。
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変化4図から 「大橋家家元将棋秘伝記」には△4二金、▲6一銀打、△8二玉、▲6三銀成、△9四歩、▲5三成銀、△同金、▲7一角成、△9二玉、▲7二銀成(変化5図)で下手勝ちの手順が載っています。
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手順で勝ちが決まる。
この手順で上手△9四歩が突いてあれば、▲6三銀成に△4四角と逃げて(▲6三銀成が詰めろでない)▲7二銀成、△9二玉、▲8一成銀、△8五桂で下手の負けになります。(変化6図)
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8八銀、8一玉が一例。
「 将棋独稽古 」 には変化4図で、△6一角、▲4一銀打、△4二金、▲6一銀不成、△同玉、▲4三金(変化7図)の変化が載っています。山田九段の解説では、以下△4一金で下手勝ち切れないのではないかとのことです。
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将棋ソフト「水匠4改」の検討では、変化7図で△同金、▲5二角、△7二玉、▲4三角成、△4二金(変化8図)で上手有利です。下手の▲4一銀打が疑問手です。
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変化4図から△6一角に対する将棋ソフトの検討では、▲同銀不成、△同玉、▲4一角(変化9図)で下手有利を保っていますが、勝ち切れるかどうか微妙です。
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変化4図を再掲します。
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変化4図の将棋ソフトの最善手は△6四角です。意外な手ですが、以下▲6一銀打、△6二玉、▲4三銀不成、△6一玉、▲5四銀成、△6六桂、▲同歩、△4五角、▲6六桂、△1九角成(変化10図)となれば全くの互角で飛車落ちの手合いでは下手が勝てない形勢です。手順中▲4三銀不成が大事な手でこれ以外では下手不利になります。
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手合いでは上手有利
結論としては、変化4図では、上手△6四角で互角の形勢。また、△6一角でも下手大変です。上手が事前に△9四歩を突いてあれば、△4二金で上手良しということです(△4四角でも後手良し)。やはり上手は△9四歩を入れた方が良いようです。
第3図に戻ります。
第3図から△6四銀(第4図)と
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△6四歩(第5図)に分かれます。
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第4図を「第3章 6四銀型」、第5図を「第4章 6四歩持久戦型」で調べていきます。6四銀型は最近では板谷八段の「飛落精妙」、花村九段の「よくわかる駒落ち」以外詳しく書かれた定跡書がありません。 6四歩持久戦型 は所司六段の「駒落ち定跡」が新研究を披露した完成度の高いものですので後回しにします。