四間飛車穴熊 相穴熊の棋譜➂

先週のNHK杯で、青嶋五段が四間飛車相穴熊をまた採用しましたので、棋譜をご紹介します。青嶋五段の棋譜は3局目です。青嶋五段は、居飛車も指しこなす若手ですが、ここ一番では四間飛車穴熊を採用しているようです。本局は四間飛車相穴熊6六歩型の基本形ともいえる形から戦いが始まりましたので非常に興味深く観戦しました。

2017-10-02 屋敷 伸之 九段 vs. 青嶋 未来 五段 NHK杯2回戦

第1図は定跡の基本形で定跡書にも書かれている戦型です。第1図から後手の指し方は➀6五歩、➁4五歩、➂1四歩、➃1二香、➄6一飛に分かれます。
➀6五歩は後手としては指したい手ですが、▲5五歩、△6六歩、▲同銀、△6五銀、▲同銀、△同飛、▲6八飛が広瀬章人八段の「振り飛車穴熊の最終進化」に書かれている手順です。
これは、後手5二金が離れているため後手不満となっています。また、△6五歩に▲6八飛としても後手の指し方が難しいようです。

➁4五歩には、変化3図▲6八銀引とされて
▲6五歩を見せられて後手が困っています。先手の▲3六歩が突いていない形は後手に不利な条件です。
➂1四歩は以前有力とされていましたが、佐藤康光九段が藤井九段に対して▲5五歩の新手を指してからは1四歩と指す人はいないようです。
▲5五歩、△同銀、▲3六歩、△4五歩、▲2四歩、△同角、▲同飛、△同歩、▲2二角で変化4図
先手が良いと言われています。
➃1二香は広瀬八段の本で最有力とされている形、以下▲3六歩、△4五歩、▲6八銀引、△6五歩で変化5図
先手は▲同歩と▲2四歩がありともに難解な戦いになります。
本譜は➄6一飛を採用し、▲3六歩、△4五歩、▲6八銀引、△6五歩
第2図では▲同歩の実戦も多いですが、屋敷九段は▲2四歩を選びました。▲6五同歩とすると、△7七角成、▲同銀右、△4六歩、▲同歩、△5七角、▲2二角、△4六角成で変化6図
広瀬八段は互角の判定ですが、北島忠雄七段の「相穴熊の最先端」ではアングマン遠藤正樹氏との実戦とのことで先手優勢としています。実戦は歩を渡したため後手が△6六歩と打って第3図
以下▲2二歩、△6五銀、▲2一歩成、△7六銀で第4図
△7六銀の場合、前の➃1二香型なら香を取られません。したがって、△5六銀が広瀬八段の本で本線とされている変化。以下▲1一と、△5五角、▲2四飛、△6七歩成と決戦するのですが、▲5五角、△7八と、▲同金、△6七歩、▲7八銀右、△6八金、▲6九歩の変化7図でわずかに先手有利とのことです。

本譜は第5図となりますが
第5図は、広瀬八段は先手穴熊が固く後手自信なしとのこと。
△7六銀は青嶋五段の研究のようです。
局後の感想戦では、第6図の▲7二歩で変化8図▲6二歩が有力だったとのこと。
△同金なら▲6四香があり、△同飛は▲5九香、△4六馬、▲5三桂成で難解な勝負でした。
第7図、▲6一飛が良い手に見えましたが、△6六歩に▲同銀と取らざるを得ず、第8図△5一金打とされては大勢決しました。

今回の定跡形は全般に居飛車有利と見ているプロが多いのではないでしょうか。また、広瀬八段は第1図で△1二香を推しています。プロの定説に挑戦しての勝利は鮮やかでした。今まで、青嶋五段に注目して来ましたが、今回も見事な穴熊の指し回しを見せてくれました。NHK杯で活躍し、また穴熊の将棋を見せてもらいたいものです。

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