先手中飛車の相振り飛車 女流王座戦第1局から

女流王将戦と並行して女流王座戦でも 女流四冠対決が行われることになった。里見さんと西山さん(肩書は変動するので敬称略とします。)の対局では3局連続の先手中飛車の相振り飛車となりました。なお、検討には水匠4改を使用しています。

第11期リコー杯女流王座戦 第1局 2021年10月28日 先手里見香奈女流四冠 後手西山朋佳 女流王座

第1図 前局の女流王将戦第2局に続き後手三間飛車の出だしですが、西山さんは△3四飛と早く浮きました。

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先手中飛車の相振り飛車 女流王将戦から

 相振り飛車における中飛車は、従来あまり好まれていなかったが、最近先手中飛車が振り飛車の主力戦法となってからは、その対策として後手三間飛車等の相振り飛車が採用されるようになり、対局数も増えているようだ。

 研究がすすみ中飛車側も十分させることがわかってきたが、男性プロでは振り飛車自体が少ないこともあり、あまり見ることがない。一方、女流棋戦は振り飛車党が多く相振り飛車の採用率も高いためアマにとっては参考になる。

 女流とはいえ今回女流王将戦を戦う、西山朋佳女流四冠と、里見香奈女流四冠は元奨励会三段で三段リーグこそ突破できなかったものの、最近の男性棋士参加の棋戦でかなりの勝ち星を上げている実力者であり、アマが勉強するには十分以上の存在だと思う。

 今回は女流王将戦を教材に、先手中飛車の相振り飛車の指し方を学んでみたい。なお、検討は将棋ソフト水匠4改を使用しています。PCスペックはAMD Ryzen 7 3700X、RTX2060で、一般の家庭用PCよりは上ですが高性能とは言えないので評価値が少し異なる場合があるかもしれませんがご容赦ください。

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中飛車対一直線穴熊の棋譜


王座戦1回戦から佐藤天彦名人 vs 青島未来五段の一直線穴熊の棋譜です。解説は日本経済新聞の棋譜欄からです。
青島五段は2015年度勝率第1位になった新進気鋭で、オールラウンダーですが、「相穴熊戦がめちゃくちゃ強いですよ」(佐々木大地4段)との評があります。

先手中飛車から第1図で5五歩位取りの戦型が決まりました。
対して後手の佐藤名人はいわゆる一直線穴熊の作戦です。先手も▲4六銀で相穴熊の方針です。代えて▲5六銀なら美濃囲でバランス重視の方針になります。

第3図で▲3五歩と仕掛けましたが、仕掛けずに穴熊を完成させるのも有力です。「糸谷&斎藤の現代将棋解体新書」では相穴熊の組合は振飛車十分との見解が示されています。以下後手が△8四飛から△6四飛としたのに対して▲6六角と防いで第4図です。

ここで後手△7四飛としたのですが、青島五段は△6六飛を心配していたとのこと。以下、▲同歩、△6七角で変化1図ですが、

▲8八飛なら△5五角、▲8二飛、△4九角成、▲同金、△3六金で先手自信がなく、▲5九飛、△7八角成、▲2六銀、△6八馬、▲5六飛、△6七馬、▲5九飛、△6八馬、▲5六飛以下の千日手になりそうで悩んでいたとの青島五段の感想です。本譜は先手の▲7四歩が上手い突き捨てでした。
後手も桂を狙って反撃し、第5図▲5四歩で大決戦です。
第5図から△6六飛、▲同歩に△4七銀では、一旦変化2図、△5四歩と手を戻した方が良かったようです。
▲同飛なら、△6六角、▲6一飛、△3九角成、▲同金、△3八歩、▲同金に△7二角が好手で佐藤名人も「こちらだった」と同意したようです。

第6図、▲4二銀が読みの入った一着で、▲3三銀では△5五角打で自信がないとのこと。先手角損ながら先手玉に詰めろの筋がなく青島五段の金星となりました。

第7図の投了図からは、△同玉、▲5一竜、△4一歩、▲2一金、△同玉、▲4一竜、△3一金、▲3三桂、△同金、▲同歩成で必死です。