先手角交換四間飛車の相振り飛車 女流王将戦第3局から

女流四冠同士の対戦となった女流王将戦の第3局は、里見さんが勝ち西山さんとの番勝負で初めて勝利しました。共同通信の記事を引用します。

将棋、里見が女流王将を奪還 西山破り五冠復帰

 将棋の第43期霧島酒造杯女流王将戦3番勝負の第3局は4日、東京都渋谷区の将棋会館で指され、挑戦者で後手の里見香奈女流四冠(29)が104手で西山朋佳女流王将(26)を破り、2勝1敗で3期ぶりにタイトルを奪還した。これで清麗、女流名人、女流王位、倉敷藤花を合わせ、2019年以来の五冠となった。

 里見女流王将は自身の持つ通算タイトル数を45期に更新。ライバルの西山前女流王将と5度目のタイトル戦で、初めて勝利した。

 西山前女流王将は10月16日に白玲を獲得して自身最多の四冠(白玲、女王、女流王座、女流王将)になったばかりだったが、三冠に退いた。」

今回も棋譜を将棋ソフトで検討しながら、相振り飛車の指し方を学びたいと思います。

第43期女流王将戦 第3局 2021年11月4日 先手西山朋佳 女流王将 後手里見香奈女流四冠 

将棋ソフトは水匠4改を使用しています。両者の肩書は変更になることが多いので敬称略とさせて いただきます。

初手からの指し手 ▲7六歩、△3四歩、▲6八飛、△2四歩、▲2八銀、△2五歩(第1図) 

先手西山さんの角交換四間飛車に対し、里見さんの△2四歩は、男性プロ間でも研究されている戦型です。

▲2八銀では▲4八玉から▲3八玉も普通ですが、▲2八銀は▲3六歩、▲3七銀を含みにした手です。

第1図からの指し手 ▲4八玉、△5四歩、▲8六歩、△3二飛(第2図)

△5四歩は、飛車を移動した際の▲6五角に備えた手。▲8六歩は杉本真隆八段の「角交換相振り飛車」で3八玉型ですが推奨されている指し方です。△3二飛では、△8八角成、▲同飛、△2二飛と向かい飛車にしたいのですが、▲8六歩の効果で先手の8筋の攻めが早くなります。また、△3二飛で△4四歩と角道を止める手も考えられます。

第2図からの指し手 ▲8五歩、△8二銀、▲2二角成、△同飛、▲8八飛、△6二玉、▲8四歩、△同歩、▲同飛、8三歩、▲5四飛、△8七角以下とすすみ33手目が(第3図)

第2図から先手は角交換して8筋に飛車を移動し後手の5四歩を狙って動きました。後手は△8七角から馬を作って対抗しました。

第3図から後手は△3三銀、△4四銀と銀を繰り出したのですが、▲3一角から先手に馬を作られてしまいました。△3三銀では△3三桂も普通の指し方だったかもしれません。

第4図 53手目▲5六馬と引き付けたところでは、馬の働きの差で先手がやや優勢になりました。

第5図 △7三同金と取った局面です。

第5図からの指し手 ▲3四馬、△8五飛、▲1六馬、△1四桂、▲8三歩成、△同飛(第6図)

第5図で先手は▲3四馬といわゆるB面攻撃に出て、以下△8五飛、▲1六馬、△1四桂となりました。後手△1四桂は受けだけのつらい手ですが、こう辛抱されると意外に先手に思わしい手がありません。8筋の飛車成も残っており、ここで先手は優位を失ったようです。▲3四馬では、▲7四歩等後手玉を直接攻めた方がよかったようです。

第6図で西山さんは▲6五桂と攻めたのですが、▲8六歩または▲8七歩と受けていれば互角の形勢が続いていました。▲6五桂以下、△8九飛成、▲4一角に△5三歩が渋い受けで先手の攻めが細く後手が優勢になりました。西山さんは失敗に気づいて焦りがあったのかもしれません。

第7図 先手の攻めの間隙をぬって△5六歩と急所に手がついては、後手優勢がはっきりしてきました。

第8図 第7図から▲5四馬、△5七歩成、▲同玉と進み、△7五角が決め手となりました。イナズマの一手とでもいうところで、以下先手玉を下段に落とし、△5三角と金を取って後手玉が安全になります。

第9図 △5七歩で勝敗は決し、以下いくばくもなく後手の勝利となりました。

西山さんはタイトルの重圧があったのか、前半やや優位に推移しながら後半は精神的に焦りが感じられるところがあったようです。里見さんは辛抱強くチャンスを待ち、好転してからは攻防ともに実力を発揮したと思います。これからも両雄の対決をフォローして行きたいと思います。

女流王将戦第3局の棋譜はこちらです。

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