康光流ダイレクト向かい飛車の棋譜


佐藤康光九段は独特のダイレクト向かい飛車を採用しています。プロ棋士でマネをする人もなく、毎回指し方も変化していますが、今回2017年4月の王座戦の棋譜が面白いのでご紹介します。解説は日本経済新聞の棋譜欄からです。
阿久津主税 八段 vs. 佐藤康光 九段 第65期王座戦二次予選
佐藤九段のダイレクト向かい飛車は第1図の△4二金が特徴です。
第1図以下は▲6一馬、△同玉、▲7五金と通常のダイレクト向かい飛車の手順で進み以下陣形整備して第2図、
以前の棋譜では、△4三金で△5四歩として△3四銀と活用する場合が多かったようです。△3四金から△2五歩は、今回初めて見せる指し方と思います。第2図から、▲8八玉、△3四金、▲7八金、△2五歩、▲同歩、△同金、▲4五歩、△2六金で第3図
先手の阿久津八段は玉を深く囲います。△2六金は思い切った手です。ここで▲2三歩、△同飛、▲2四歩、△同飛、▲1五角の変化1図は
2七金、▲2四角、△2八金で後手良し。▲3三角成ときても△同桂で飛銀の持ち駒では後手玉は寄りません。
第3図から▲4四歩、△同銀、▲4三歩、△2七金、▲4八飛、△3三銀で第4図。
途中、△4四同銀に▲2三歩、△同飛、▲2四歩、△同飛、▲1五角の変化2図は
△2二飛が冷静で、▲2六飛にも▲2六角にも、△2五歩から△1四歩で角を逮捕できます。
第4図で先手は▲2三歩としましたが、先に▲5五角がまさったようです。△6四金ならそこで▲2三歩として変化3図。
以下、△同飛、▲3三角成、△同桂、▲4二歩成、△4五桂、▲4六銀、△4七歩、▲同飛、△6九角、▲4八飛の変化4図で難解ながら先手に分のある形勢だったとのこと。

阿久津八段は本譜の▲5五角に後手がどう受けるか分からなったと振り返っています。▲5五角に△6四金なら前記の変化に合流、△7三角には▲5六銀の味が良い。先に歩を叩いたため、後手は受けずに△2八金として第5図。
2八金は1九金と香を取って4筋に打つ含みがあります。第5図から▲5八銀、△4一歩、▲3三角成、△同桂、▲4二歩成、△1九金、▲5二と、△4五香、▲3四銀と進み第6図
第6図では先手は苦戦を意識したとのこと。
しかし、佐藤九段も思ったより難しいと考えていたようです。以下△2九飛成、▲4五銀、△同桂、▲同飛に△1四角は▲4三飛成に△2五角打ちを用意したもの。そこで、先手の▲5六香が好手で難解な形勢となりました。
以下、△5一銀打、▲同と、△同銀、▲5三香成、△5二歩、▲5四香成、△6二桂、▲5五成香、△4ニ銀、▲4四歩で第8図、途中△6二桂では、△6二銀が良かったと佐藤九段の感想。

第8図で△2七角が敗因となった。代えて変化5図△2五角打とし、
以下▲3六歩なら、△同角、▲4三歩成、△4五角、▲同成香、△4三銀、▲5五角、△1八飛の変化6図となれば、後手乗りの終盤戦でした。▲3六歩では▲4八飛が正解で激戦と船江6段の見解が出ています。

本局は佐藤九段の棒金戦法が阪田流向かい飛車のような珍しい指し方で、後手の有望な局面が多かったです。ただ、玉が薄いためダイレクト向かい飛車側を持ってマネするのはなかなか大変と思いました。チャンスがあれば一度指してみたいです。

電王戦第2局を見た感想


昨日は午後からニコニコ生放送で電王戦第2局を見ました。横歩取りを予想していたのですが、先手佐藤叡王の▲2六歩対する△4二玉で角換わりに進みました。
この対局ではPonanzaの佐藤叡王への事前貸出が行われており(この点ですでにハンデ戦といるでしょう。)、人間側の事前研究に対応するため2手目に8種類の手を乱数表で決定するようにプログラムされていたうちの1手が△4二玉のようです。人間側は永瀬七段が徹底的にPonanzaの序盤の指し手を研究したとのことで、研究範囲内だったようです。
△4二玉は良い手とは言えず、先手は△4二玉を咎めるため棒銀模様に出て、序盤は先手が指しやすい将棋になったとの評価でした。その中でも第2図、第3図の2手は解説の棋士も注目していました。

△5一銀は6四歩を突かずに4三銀型をつくることで△6四角の含みを持たせたもの。

△1五歩は玉のふところを広げながら、端攻めをしづらくした。
佐藤叡王は穴熊に囲いましたが、この前後の駒組にどこか問題があったようです。▲5五歩の仕掛けに第4図△5六角、▲4八飛、△6五歩と反撃し、
▲5四歩、△6六歩、▲6八歩、△7五歩で第5図
△7五歩が控室でも指摘していた好手で攻めが切れない形。その後
△8六歩と進んでは、先手の飛車、銀の働きが悪く後手優勢がはっきりしました。佐藤叡王はまだねばれそうな局面で潔く投了しました。佐藤名人の対局態度は立派で、記者会見の受け答えも誠実で理論的というかしっかりしたもので、私はファンになってしまいました。
ともあれ、現役名人の2連敗という結果に終わり、歴代のプロ棋士達の作り上げた神話が崩壊してプロ棋士も普通の人間になったという歴史的な1局だったと思います。
写真はmtmtさんのTwitterから使わせていただきました。

Ponanza敗れる


5月5日に行われた、第27回世界コンピュータ将棋選手権の決勝リーグは、最終戦でPonanza vs elmoの全勝対決となり、elmoが勝って会場は大変な盛り上がりでした。えびふらいさんの生中継を後半からみていましたが、Ponanzaがelmoに2連敗するとは驚きでした。

第1図で△1七香と捨てて飛の横ぎきを消し、以下▲同飛、△7六飛、▲7七歩、△8九銀で第2図

△8九銀と強襲していつものPonanzaの寄せが決まったと思ったのですが、どうも読み抜けがあったらしく寄せきれずelmoの勝勢となりました。
elmoは居飛車党で横歩取りが得意のようです。やねうら王ファミリーで定跡を使っているとのことでした。
決勝は将棋の内容も良く、非常に面白く見れたと思います。
写真はmtmtさんのTwitterのものを使わせていただきました。
  

詰将棋 独楽のさとを掲載します。


昭和47年の近代将棋新年号付録の故北原義治氏作「独楽のさと」を等サイトに掲載します。100局あるので3つに分けてあります。原本が破損してきましたので忘備の意味もあります。また、少し感傷的な感じの序文も一緒に載せてあります。
ページ上部の「独楽のさと」等となっているところ(スマートフォンの場合は「メニュー」)をクリックしてください。作者の実力を感じさせる好作品揃いと思います。
解答編は徐々に載せる予定です。

第27回世界コンピュータ将棋選手権が開始


本日から5月5日(金)まで世界コンピュータ将棋選手権が開催されます。今回の注目は、なんといってもディープラーニングによる学習を取り入れたPonanzaの連覇がなるかというところですが、今回のPonanzaChainerは昨年技巧に敗れた反省からか、ハードもすごいようです。
PonanzaChainerのアピール文書の内容がそのとおり発揮できれば、優勝は間違いないですし、2016年のPonanzaとどう違うかも興味深いです。
他のソフトでは、昨年2位の技巧などですが、最近のプログラムの進歩のスピードは速いので、新しいソフトが出てくるかもしれません。
インターネットでは特設サイトえびふらいさんのなま放送でどうぞ。

PONANZAの棋譜その2 2017年 第2期電王戦第1局

2017年4月1日に行われた第2期将棋電王戦の棋譜です。今回で現在の形の電王戦は終了するとのことです。
PONANZAは2015年の12月に将棋倶楽部24に登場し、高段者を相手に69連勝無敗の成績でした。短時間の対局とはいえ、将棋の内容もすごく人間を超えたことは明らかでした。その後、2016年の第1回電王戦でも山崎叡王に2連勝しましたが、内容も圧倒的でした。
今回人間側が佐藤名人ということで、初のタイトル保持者との対局で最後を飾ることとなったのですが、PONANZAが強くなり過ぎたため勝敗の興味は減ってしまいました。ただ棋譜は、やはり怖いもの見たさで見たいと思います。この第1局も初手3八金からそれはないでしょうという感じでしたが、中盤になると普通に戻っていました。佐藤名人の仕掛けが無理気味だったようですが、先手7四歩から7七桂を見逃していたようです。
一方的になってしまいましたが、第2局は人間先手なので、良い将棋が見たいものですね。ファンとしては、もっと早く羽生さんとの対戦が見たかったですが残念です。