前回までで、3三桂留跳ね違い定跡の検討を一通り終わりました。今回は将棋ソフトの新手法を紹介します。

第4図は第1図から▲4五歩、△同歩、▲同桂、△2五桂、▲2二角成、△同金、▲3三角、△4四角、▲同角成、△同銀と進んだ局面です。第4図から定跡の▲3三角に代えて▲3一角が将棋ソフトの検討で示された手です。

第4図からの指し手 ▲3一角、△3二金、▲6四角成、△同歩、▲5三銀(第25図)
▲3一角から角をきって強襲するのが新手法で、十分成立しているようです。こういう直線的な手順はプロ棋士は軽視するのかもしれません。
第25図で上手の選択肢は➀△3七桂成、➁△同銀、➂△同金の三つです。▲3一角に△3七桂成も一応調べておきます。

・3一角に3七桂成の変化
▲2二角成、△4八成桂、▲同金(変化9図)で下手はっきり優勢です。以下△4三歩、▲1一馬、△2九飛、▲3三桂成、△1九飛成、▲4二金と進めば、上手は攻撃力不足で下手勝勢です。

第25図からの指し手➀ △3七桂成、▲5二銀不成、△4八成桂、▲同金(第26図)
上手は△3七桂成が本線です。第26図は評価値的には下手大優勢 ですが、勝つまでは簡単ではありません。指しきらないように焦らず上手玉を包囲する必要があります。第26図では上手の手も難しいですが、A.△5五歩とB.△4七歩を調べます。

まだ難しく感じる
第26図からの指し手A.△5五歩、▲同銀、△4五銀、▲6三金、△8二玉、▲6一銀不成(第27図)
△5五歩、▲同銀に桂の方を外します。銀を取るのは▲5三桂成があります。 第27図では上手△5一桂と△2二角、▲4四歩、△2二角を調べてみます。なお、上手は飛を持ち駒にいていた方が後の9筋の攻防で牽制になります。△2八飛は▲4九歩で受かります。

第27図からの指し手 △5一桂、▲7二金 イ.△9二玉、▲4六歩(28図)
△5一桂は下手にとって一番いやな手です。▲7二金で普通は▲7二銀成としたいところで、それでも下手悪くありませんが、評価値が劣ります。▲4六歩と銀の動きを催促し、以下△3六銀には▲6四銀。△2二角には▲4五歩、△5五角、▲7七桂で下手優勢です。

△9二玉に代えてロ.△9三玉は▲8一金、△8四歩、▲4六歩、△3六銀、▲6四銀(29図)
▲8一金と働きがないようですが、桂香を取ることで上手の防御を薄くする意味です。△8四歩に代えて△3三角は▲4四桂、△4二金、▲7二銀不成 です。以下△6二飛としても▲8五桂、△8四玉、▲8二金で包囲します。


第27図から△5一桂に代えて△2二角、▲4四歩、△2八角は、▲6四銀、△4四角、▲7二銀成、△9二玉、▲8一成銀(30図) 第30図で△同玉は▲7三銀成、△9九角成は▲7三銀不成で下手勝勢です。

【追 記】いろいろ検討していたところ、第26図からの△5五歩に▲7五桂とする手が良いことが分かりました。以下△8二玉、▲6三桂成、△5六歩、▲6一銀不成となった局面は本譜より金を手持ちにしている分優っています。▲7五桂に△7四角は▲6三銀不成が好手で△同角、▲同桂成、△同玉、▲4一角で下手勝勢です。ただ、本譜の順でも下手良しです。
第26図からの指し手B. △4七歩、▲同金、△7四角、▲6三金(31図)
第26図からのもう一つの指し手です。△4七歩には▲7五桂としても下手優勢ですが、手堅い方を選びました。
上手単に△7四角でも同じに▲6三金で問題ありません。

△同角、▲同金、△同銀成、▲4一角(32図)
△同角は32図の▲4一角で遠回りのようですが、△7二玉には▲3二角成で▲5四馬が残り確実に下手勝ちになります。

△8二玉、▲7五歩、△6三角、▲同銀成、△4五銀、▲7四歩(33図)
△8二玉には▲7五歩と催促します。▲7四歩に△7五飛なら堅く▲7七桂打ちとし銀の入手が確実です。

以上で△3七桂成の変化を終わります。上手の指し方はいろいろあると思いますが、将棋ソフトに最善を尽くされると勝つのは容易ではありません。人間の上手はここまで粘れないと思います。
第25図からの指し手➁ △5三同銀、▲同桂成、△同金、▲4一飛成(第34図)
第34図は下手の角桂と上手の銀の交換ですが、飛成が大きく上手は受けに窮しています。

第34図からの指し手 △4三銀、▲4四歩、△同金、▲5二銀(第35図)
△4三銀に代えて△3一銀は ▲5二銀、△8二玉、▲5一竜、△7一角、▲6一銀成と角を取れば、以下△4二銀で長引いても下手優勢は動きません。また、△4四歩に△5二角、▲5一竜、△6二角と粘れば、▲4三歩成、△同金上、▲1一竜で下手勝勢です。以下△3七桂成なら▲3二銀でぼちぼちやっていけば△4二金には▲5一銀があります。第35図からは、△6二玉としても▲4三銀成、△同金上、▲5二銀で下手勝勢です。

第25図からの指し手➂ △5三同金、▲同桂成、△同銀、▲4一飛成(第36図)
第36図も下手の飛成が大きく、上手は受けに困っています。

第36図からの指し手 △4二金、▲7一金、△6三玉、▲6一竜、△6二桂、▲8一金、△7四歩、▲8二金(第37図)
下手は指し切らないよう、ゆっくりと攻めれば問題ありません。
△4二金で△4三角としても、▲7一金、△6二玉、▲8一金としてゆっくり攻めれば、▲1一竜の攻めゴマ補給もあり上手困っています。また、△4三銀は▲5二金、△6三玉、▲5三金、△同玉、▲8一竜です。

今回で跳ね違い定跡の検討を終了し、次回から6四銀型(2)5二金待機型に入ります。